前作”nitro”から12年振り9枚目のフルアルバム!


weak Trailer


01.KIRAWAREMONO
02.NOCHINOI
03.Nothing
04.助詩
05.New World
06.ヘルノポリス
07.公然スペース罪
08.tORA
09.Sound Wave 2019ver.
10.Future Now?

2019/03/20(水) ¥2,750(本体価格)+税 / CD Album / cutting edge / CTCR-14958

MUSIC VIDEO


KIRAWAREMONO

Director/Edit : Yohei Saito(rokapenis)
Camera : Shinya Aoyama
Camera Assistant : Hibiki Miyazawa
CG : Kezzardrix
Dancer : Noilly


助詩

Artwork : TOMOHIRO MATSUDA
Animation & Director : HARUNOBU MITSUI(Sgb)

“weak” SPECIAL INTERVIEW


interviewer : 小野島大

 WRENCH待望のニュー・アルバム『weak』がついにリリースされる。前作『nitro』(2007)から、なんと12年ぶりの9作目である。
 だが、その出来映えは圧倒的に素晴らしい。12年ものブランクがあったとはとても思えない、ゴリゴリのテンション高い音にぶっ飛ぶ。変拍子とポリリズムが入り乱れる複雑な曲なのに、パワフルでダンサブルでカタルシスがハンパない。これぞWRENCHという高密度の音に、あるべきものがあるべき時に帰ってきたと実感する。
 久しぶりに会ったSHIGE(vo)、坂元東(g)、松田知大(b)、MUROCHIN(ds)の4人。明確なリーダーも絶対的なソングライターもいない。4人が対等の立場で発言し意見を戦わせながら、ひとつの音楽を作り上げていく、そのあり方は、ロック・バンドとしてはかなり特異だが、それこそがWRECHサウンドの秘密でもある。質問を投げかけると全員が一斉に喋り出してカオスになるインタビューは相変わらずだった。

『nitro』を超えなきゃいけない、というプレッシャーはずっとあった

ーーなんと12年ぶりのオリジナル・アルバムです。なぜこれほど間が空いてしまったんでしょうか。
SHIGE : ええとね、前作のあとに一度方向性がブレちゃって。ライヴ/リミックス盤(『EDGE OF CHAOS reCONSTRUCTION』(2011))とかコラボ盤(『drub』(2008))とか出しつつ、暗中模索なところもあり。すごく繊細なアンサンブルでできてるバンドだと思うんで、そこがちょっとギクシャクしたところもあったんです。方向性指向性やり方……飽きてきたとか。熱量の入れ具合が4人一緒にならなかった。ちぐはぐな感じで。でもライヴはやっていて。ボツ曲がハンパないんですよ。その繰り返しで、気づいたら浦島太郎状態。
坂元 : おのおの、いろんなところで活動しているのもあるし、年取ってくるとだんだん時間の流れが穏やかになるというのもあって(笑)、すごいゆっくりになってくる。
SHIGE : 竜宮城にいたんだよ、俺たち(笑)。
坂元 : それでもライヴはやってたし、スタジオもまあまあ入っててて、曲も作ってて。
松田 : 止まってる感じは一切なかったですよ。
ーーそれは外から見てても思ってました。バンドとして止まってる印象は一切ないのに、なぜアルバムを出さないのか、ぐらいの……。
MUROCHIN : 年が明けるたびに、アルバム出そうぜ今年は、って言ってて、口癖のようになっちゃって(笑)。
坂元 : 必ず酔っ払って盛り上がるんですけどね(笑)。
MUROCHIN : だんだん言い慣れてきちゃって、もう作らなくてもいいか、みたいな(笑)。
ーー方向性の違いというのは……。
松田 : 方向性が違うって、昔から常に全員違うから(笑)。
SHIGE : うん、でもそれはそのつど一致してこれまでもアルバム出してきたわけじゃん。でもこの12年っていう単位でいうと……
松田 : 『nitro』では、ちょうど合致して盛り上がって作れたけど、それは(この12年間)なかったかもしれない。
SHIGE : そうそう。噛み合わせがね。
坂元 : 方向性を束ねるのがすごく大変なバンドなんで。
松田 : 方向性っていうよりも、同じモードに全員がなるみたいな、テンションがシンクロしていくような。『nitro』の時はそれが全員揃った感じがあったんだよね。今回は、こちらがそろそろ作らなきゃって思ってる時に、ちょうどエイベックスからアルバム出しませんかって話がきたんで。
SHIGE : うん、そういう話が噛み合って、もともとチラホラ作ってた曲を、本腰入れてやる時期がきたかなと。
坂元 : 具体的な〆切りが出来ると、漠然としていたアルバムの方向性が必然的に練られてくる。過去アルバムを作ってなかった数年間っていうのは、みんなそれなりにWRENCHをやりたいって気持ちはあったけど、〆切りがないがゆえに急いでその方向性を定める必要もなかったから。最初に話が来たのは一昨年の春ぐらい?
松田 : うん。それから2年ぐらいは制作かけてるね。
SHIGE : 自分たちで出そうかって話もしてたけど、でも尻を叩く奴がいないんで、ずるずると……。
ーー今だったらメジャーに頼らないでも、自主でやろうと思えばできるけど。
松田 : でも自分たちでやってたら、今回の規模のレコーディングはできなかったと思うんです。金銭的な問題でね。そこはすごく大きくて、『nitro』もそれなりの環境でやらせてもらって。あのクオリティを保ちたいと思ったら、ある程度の規模の環境ーーそれでも費用は全然安いんですけどーーでレコーディングしないと。今回はそれができたんで。
ーー『nitro』は今聴き返しても、ものすごく完成度が高いアルバムで。これだけのものを作って、WRENCHとしてはやれることをやってしまったという達成感が、皆さんの中にあったんじゃないか。
SHIGE : それはあったかもしれない。
松田 : あれを超えなきゃいけないってプレッシャーみたいなものはすごくありましたね。「やっぱり『nitro』の方が良かったね」と言われるようなものを12年ぶりのアルバムで絶対作れないじゃないですか。
ーーでも12年間も作らないと、そういうハードルってどんどん上がっていきませんか。
松田 : 上がります(笑)。なので大変だった。
SHIGE : 凄かったですよ。朝起きたら未読65件っていう。んん?みたいな(笑)。昔と違ってコンスタントに会えないから、LINEとかのやりとりが中心になってくる。あの曲のここがどうとか、メンバー全員で言い合って。朝起きたら未読65件(笑)。もう朝起きるのが辛くて(笑)。とにかく曲を作ってはボツり、作ってはボツりの繰り返しだった。ということは、自分らがここへ行こうぜっていう落としどころが、なかなか見つからなかったということだろうね。
ーーボツになったのは、主にどういう理由だったんですか。
松田 : 全員がOKにならないとその曲は合格にならない。全員が熱くならないと。ひとりだけ盛り上がってても、その気持ちを全員引っ張っていけないし。
坂元 : ライヴでやった曲もあるんだけどね。
SHIGE : あるある。何回もやって……。
坂元 : 何回やってもどうもしっくりこなくて、いつのまにかやらなくなったものも。
MUROCHIN : 自然に忘れてるよね(笑)。
坂元 : 結局ライヴでは気づいたら『nitro』の曲をやってたりする。『nitro』の曲のテンションが高くて、特にLIVEで演奏した時にそのテンションを超える曲がなかなかできなかったということでしょうね。楽曲の良し悪しというよりも。
ーーなぜ『nitro』は、そんなにテンションの高いものになったんですか。
全員 : うーん……
松田 : なんだろうね?
MUROCHIN : なんか集中力高かったよ。2回だけ合わせて完成したりとかさ。SHIGEちゃんのドーンという閃きとバンドのバチーン!っていう演奏がタイミングよくあわさって……。
ーーバイオリズムがあった。
MUROCHIN : そうそう。ピカーン!という感じでフィーヴァーした、みたいな。
松田 : それはすごいあったね。
ーーその各人のテンションがあわさって一致する感じが、『nitro』後のセッションではなかなか生まれなかった。でも……。
松田 : 今回もそれはなかったよ(笑)
ーーないのかよ!
全員 : わははは!
松田 : 今回制作期間が長かったし。
MUROCHIN : (一致するのを)ずっと待ってたんですけど、忙しすぎて、みんな。
松田 : そこは無理やり……(笑)。
SHIGE : まあでも、その無理くりさ加減が良かったんじゃない?
松田 : 難産は難産だったよね。
ーーふむ。そういう状態になって、何年もレコード出させなくて、次の方向性もはっきり定まらなくて、バンドがだんだんモチベーションがなくなって活動が止まっていく、ということはありがちだと思うんですが。
松田 : ライヴが楽しいんですよ、単純に。音源を作るよりもライヴを続けていければ、別に大丈夫。音源はおまけかな……。
MUROCHIN : ただ(ライヴの)ブッキングが全く入らなくなるタイミングがあって。
松田 : 自分たちでライヴを企画することはあまりないんでね。
MUROCHIN : 「そろそろリリースださないと、このまましぼんでしまうかも」みたいな話をしたことはあるけど。
ーーでもバンドを続けることには疑いはなかった。
坂元 : 有難いことに、3ヶ月以上オファーが途絶えたことは一回もなくて。そういう、ウチら以外の人たちから気づかないうちに支えてもらってた、というのはあると思う。

言葉でリストカットしているような音楽

ーーなるほど。じゃあ今回はかなり長いことセッションをやって、候補の曲はいっぱいあったわけですね。
松田 : スタジオで合わせて録って、そのまま放置になった曲もたくさんある。今回そういうのも引っ張り出して聞いて、何年も前の曲も採用されたり。丸々一曲できてたというよりは、アイディアだけあって、そのアイディアだけボツになるっていうのはかなり繰り返してたね。
ーー今回の曲の作り方は、みなさんそれぞれアイディアを持ち寄って。
SHIGE : そうそう。『nitro』は、根本的に曲の全体像から自分がアイディアを出してたんですよ。でも今回はちょっと引いたのが良かったかなと。
ーーじゃあ、最初からこういうものにしようっていう明確な設計図があって、それに沿って作っていったというよりは……
SHIGE : うん、いろんなものを試して試して削ぎ落として入れ込んで……
坂元 : いわゆるアルバム・コンセプトというのはなかったかもしれないですね。その話はSHIGEから出たりもしたいんだけど、曲を作っていくうちに、こだわらない方がいいんじゃないかと。
松田 : みんなやりたいこと違いすぎるから(笑)、コンセプトとか立てられない。
SHIGE : そうなんだよね。バンマスがいればね、ついていくだけだけど。
ーーああ、レンチはそれがないんですよね。じゃあ皆さんがレンチの新曲を作ることに関して、求めていたことはそれぞれ違うってことですか。
SHIGE : ああ、違うんじゃないですか。
ーーSHIGEさんは何を?
SHIGE : 今回のアルバムに関しては……リリックも含めて、深い傷跡を作りたい、自分に。さらけ出す、ってことですね。それがないと自分は納得いかないだろうな、というところから始まったんで。振り返ってみると12年間はもやもやした中でやっていた。さあほんとにやろうかってなった時に、否が応でも(自分に)向き合うことになるわけで。それをすべてさらけ出そうと。
ーーWRENCHのほかにもいろいろ活動をやってますが、「自分をさらけ出す」という部分では、WRENCHが一番さらけ出せる、あるいは、さらけ出すべきだと?
SHIGE : うん、うん。もう音楽的なところを超えてますから。表現として。
ーー自分の人間性とか生活とか人生とか、そういうものが全部投影されている。
SHIGE : そう、そうです。
ーーとなるとハンパなところで妥協できない。とことんさらけ出すしかない。
SHIGE : そうそうそう。ある突然ドドドッと降りてくるんですよ、言葉と葛藤が。そうかこの苦しみだ、みたいなところから始まる。
ーー自分をさらけ出して曲(詞)を作るのは、そういう生みの苦しみがある。
SHIGE : そう。だからこそ充実感がある。そういう苦しみと充実感はWRENCHでしか得られない。言葉でリストカットしてるみたいな。
ーー血を流してるんだと。
SHIGE : そうです。今回は20年前のインディーズ時代に出した『Wandering in the Emptiness』(1997)というアルバムをちょっと意識してて。あの時はバックパッカーで、インド行ったりヒマラヤ登ったり、いろいろやってた頃の作品なんですけど、あの時の歌詞が、20年前の自分の、可愛いんだけど熱いな、みたいな部分がよく出てて。
ーースピリチュアルで哲学的で宇宙的な。
SHIGE : それを超えるようなものをやりたいなっていうのが(歌詞の)コンセプトがあったんですよ。でも実際に『Wandering in the Emptiness』みたいな歌詞を書こうとしてもできないんですよ。揉まれてるし塵も積もってるし。あんな青二才で輝いているような歌詞なんてできないし、今の自分じゃ嘘くさくて言えないし。だから今しかできない歌詞を書かないと、いうところで。
ーー20年前の自分と今の自分って、何が一番違うんですか。
SHIGE : なんだろうな……大いなる絶望感とか。胸を張って絶望感が言えることかな。経験を積んで、いい方向に行くときもあるんだけど、絶望感も比例して増えていきますから。
ーー何に絶望するんですか。
SHIGE : ……自分ですね。自分に絶望しちゃう。だからアルバム・タイトルも大きな意味で『weak』でいいんじゃないの、って。
ーー確かに<人間のくず> (「KIRAWAREMONO」)とか<もはやおれにはなんにもない>(「NOTHING」)とか<オレはニセモノ>(「NEW WORLD」)とか、そういう表現が出てきますね。その自分に対する絶望は克服すべきものなんですか。
SHIGE : 克服はしないです。克服じゃなく、大いなる失敗作を作ってやろうという気持ちとか、微妙にあるんですけど。
ーー絶望感と共に生きる。
SHIGE : そうそうそう。「君にはまだ未来がある、今いくら失敗してもいい」というトシじゃないじゃないですか、もう(笑)。なのでそこで「大いなる失敗作」を作ってやろうという気持ちで、前に行ける。
ーー坂元さんは何をWRENCHに求めてますか?
坂元 : 今回の場合は、前の『drub』ってアルバムぐらいからなんですけど、ミニマリズムだったりポリリズムだったり変拍子だったり、それで踊らせる、というか。かっちり踊れないんだけど、そのリズムを反復することで頭の中で気持ち良くなるようなリズム体系みたいなものを実現できれば。そういうミニマルとか変拍子みたいなプログレ的なものは、もともとウチらにあった大事な要素なんだけど、それが進化していくとこうなった、みたいになればなと思ってました。
ーー松田さんは今回WRENCHに何を求めてました?
松田 : 個人的に今聞いてるような音楽をできればいいなとは思うんですけど、全然その通りにはできない。最初の自分のアイディアを4人の中に提示してから、曲が完成するまでにもう、グッチャグチャになっていくんで。なのでドンと自分のアイディアを出して、あとはみんなで料理しちゃってね、という。それはストレスもあるけど、面白い作業でもある。それで出来上がったものが面白ければね。
SHIGE : うん。
松田 : 『nitro』がほんと、完成度が高かったので、あれを超えるのに、また全然違うところからアイディアとか方法論を持っていて、全然違うアプローチで、というのは難しい。なのでウチらが得意とするようなところ……踊らせるだったり変拍子だったり、そういうところをさらに突き詰めて深いところまで研究してやる、というのが、前作を超えられる方法かなとは思いました。
ーーレンチのレンチらしいところは保ちつつ、さらに強化していくと、それがリズムへのこだわりだったり、ダンス・ミュージックであったりという。
松田 : 今回たぶん変拍子が一番多いんじゃないかと思うんですけど、それでもカラダは動かせる。そういうところは突き詰めていきたい。
ーーたぶんこの12年間の音楽シーンで一番の変化って、そういう変拍子やポリリズムで踊らせるような音楽に抵抗がなくなって、みんなすんなり受け入れるようになったということじゃないでしょうか
松田 : ああ、それはあるかも。
坂元 : それは大きいかもしれないですね。IDMとかマス・ロックとか。
松田 : 変拍子のバンド、すごく増えたから。
MUROCHIN : ああ、そうか。全然そういうの聞かないからわかんない(笑)
ーーMUROCHINさんはWRENCHの新作に何を求めてました?
MUROCHIN : ああ……みんなのアイディアをまとめたものをパソコンで聞いて、それにみんなが意見を出して、というのをずっとやってて、それを横で見ながら、どんどん(曲が)かっこよくなっていくなあ、でも難しいなあ、と思いながら……ぐらいの距離感でした、ハイ(笑)。
坂元 : でもMUROCHINに頼ってるところってすごく大きいんですよ。
ーー「難しい」というのは、プレイするのが難しい、という意味ですか。
MUROCHIN : そうですね。自分じゃ思いつかないビート。それを自分なりにやってくれっていう。
松田 : MUROCHINに一番無理難題を押しつけてる(笑)
ーーMUROCHINさんなら、このややこしい変拍子でもなんとかしてくれるだろうと。
MUROCHIN : それでどんどん曲が良くなっていくプロセスを横で楽しんでるんです。
ーーでもそうして「お前ならできるだろ」って期待されるのは、イヤな気分じゃないですよね。
MUROCHIN : そうですね。ただ今回量が多かったっていうか。すごい頑張ってなんとかできるようになった奴がボツになっちゃったりとか(笑)。
SHIGE : MUROCHINだけじゃなく全員どうしても合わなくて、オレらヘタだしもう止めようよって。できないものはしょうがないじゃんって(笑)。
ーーああ、曲がボツになる時って、出来がイマイチってだけじゃなく……
松田 : 技術的な理由も結構ある。
SHIGE : 説得力とか精神力とかテクニック力とか。
MUROCHIN : パーツはかっこいいけど、この繋がりがどうにもならねえ、みたいな。
坂元 : オレらがもっとテクニックあったら絶対カッコイイ曲だったのに、というのは結構ありますね(笑)
SHIGE : 自分たちで考えた曲が自分たちでできねえっていうんだから、まあ悔しいですよ。
ーー求める理想がすごく高くて、それに突き進んでいった結果なら、前向きでいいじゃないですか。
MUROCHIN : 常にそういう感じですね。
SHIGE : そういう理想がすごい高い所にあったから、アルバムの着地点がいい感じでできたかなっていうところはあるよね。
ーー前作がすごい高いところまで行って、その先に行こうと思ったら、もしかしたら現在の自分たちの技量を超えるようなレベルかもしれない。そこのギリギリのせめぎ合いが、本作であると。
SHIGE : そうそう。人力でやってるんでね。やっぱ巧いヘタってことになっちゃいますよね。感性とかもあるけど、巧い下手っていう一番シンプルなところに行き着く。
松田 : だから今回、技量の限界もすごく感じた(笑)。

熱いものを表現するためにどんな方法論を選択するかってところで、今回はちょっとひねくれたリズムを使った

ーーなるほど。今作はもちろん技量の積み重ねでもあると思うんですけど、アルバム全体を覆う熱気とかパワーとかテンションとか、そういうものがガンガン迫ってくるところが「レンチを聴いてるなあ」という気にさせるというか。
SHIGE : うんうん。
松田 : そういう燃えたぎるようなものは、リズムとフレーズとSHIGEの声と曲の持って行き方とかで生まれるものだと思うんです。気合いとか情熱で持っていったというよりは、そういう風に聞こえるように曲を作っているという感じに近い。どちらかというと爆発するのはライヴだと思ってるから、曲を作る時はもうちょっと理論立てて作っているかな。
坂元 : そういう熱さっていうのは、もう根底にあるんですよ。変拍子とかポリリズムとかさっきから言ってるけど、そういう方法論を使って、もともとある熱さを表現したい、ということ。それはもう大前提にあるもので、平板で冷淡な、単なるループで終わっていくような曲は絶対やりたくないから。必ず熱いものを表現するためにどんな方法論を選択するかってところで、今回はちょっとひねくれたリズムを使ったという。
ーーなるほど。完成形が見えてきたのっていつごろですか。
SHIGE : 「KIRAWAREMONO」って曲を落とした時に、これはイケるって思いました。『nitro』の時の感覚ってこれじゃなかった?みたいな。そこからいろいろ曲をリアレンジし始めて、それでなんとかうまくいった。
ーー「KIRAWAREMONO」が突破口になったんですね。
SHIGE : そうそう。あんだけやんややんや言ってた4人が、うんこれは、ってなったから。
坂元 : あの曲はほんとボツ寸前だった。元ネタはオレが作ってたんだけど、全然通じなくて。やっぱわかってもらえなかったな、もういっかこの曲はって。そうしたらSHIGEが「この曲のこのフレーズだけを引っ張ろう」って言い出して、そこからなんとか生き残っていったという。
MUROCHIN : 3回ぐらい作り直したよね。
SHIGE : そういうアルバムなんすよ。コンセプトも何もなく、ほんとに1曲1曲ディスカッションしまくった末の。
ーーじゃあ過去一番苦労した。
SHIGE : そうそうそうそう。間違いないす(笑)。リハを繰り返して、ライヴでもやって。
松田 : ライヴでやらないとわからないことっていっぱいあるんですよ。お客さんの反応を見て、直すこともあるし。ライヴがすべての基本で、ライヴで曲は生まれるものだと思ってるんで。基本的にはライヴでできることしかやってない。
ーーレコーディングはエンジニアの方とのコンビネーションがうまくいったみたいですね。ライヴ&リミックス盤『EDGE OF CHAOS reCONSTRUCTION 』(2011)も担当した三浦カオルさんです。
松田 : はい。モーターヘッドのカヴァー(『A Tribute to Motorhead 』2017)もやってくれて、その時の感触がよくて、このままアルバム行けるんじゃないかなと。普通の町スタで録ってるんですけど、いろいろ無理も聞いてくれる人だし、助かりましたね。
ーーそれまでやってきたエンジニアの方と、何が違うんですか。
坂元 : 温度が違うっていうか……もちろん『nitro』もテンション高く、いい音で気に入ってるんですけど、またそれとは別世界の凶悪な感じというか。
松田 : エンジニアというよりは、アーティストに近い。職業エンジニアみたいな人とは全然違うから。
SHIGE : もともとミュージシャンやってた人だから。言いやすいというのもあるし、同じ音楽が好きだったというのもあったし。
松田 : ダメ出しもすごくしてくれるし。
MUROCHIN : オレ、BAKUちゃんのバンド(DJ BAKU HYBRID DHARMA BAND)で一緒にやってたんですよね。それでお願いしやすかったというのもあるし、ダンス・ミュージックとオルタナ、どっちも同じぐらい好きで、理解度も一緒、みたいな感じがあうなあと。ハマるといいなあ、と思って試しでやってみたらハマったから、アルバムもお願いして。
ーーレンチらしさみたいなものが濃厚に漂っていて、でもちゃんと「今の音」になっているのは、エンジニアの方の力量も大きいのかなと思いました。
SHIGE : ああ、すごく大きいと思います。

いつまでも議論しているくどさこそが、曲に深みと情熱を与える

ーーここ12年の間の音楽シーンの変化について、なにか思うことはあります?
坂元 : ライヴやっててもそうだし、海外の音楽を聴いてても、ドローンとかダーク・アンビエントとかインダストリアルものとか、まあオーヴァーグラウンドまではいかないけど、すごく身近になってきて。
SHIGE : (笑)それ、オレたちが聴いてるってだけじゃなくて?
坂元 : アングラシーンには少なからずそういう潮流があったわけ。
松田 : 日本のメジャーなロック・シーンみたいなの、オレたち全然わかってないよね(笑)。接点ないし(笑)。
坂元 : 坂元 : ドゥーム・スラッジとかノイズとか、そういうエクストリームな音楽に対して割と世間の抵抗が少なくなってきたっていうのはあると思う。
松田 : ここ10年ぐらいずっと、そのあたりの音が好きだったし。
ーーそれが今作に影響したところもある。
坂元 : ありますね。それはすごくある。細かいギターの音作りとか。今まではカットしてたようなギターのノイズを、積極的に前に出していこう、みたいな。そういうのは多々ありますね。
ーー変拍子を突き詰めていった、という話もそうですが、そういうものが積み重なっていって、レンチの音の12年分のアップデートが為された、ということですね。
松田 : それはありますね。
ーーしかし、にもかかわらず揺るぎのないものはしっかりと感じられる作品になってますね。すごくレンチっぽい。
松田 : 土台は変わってないからね。あと、20周年の時(2012年)に90年代のセットをやってくれって頼まれてやって、それからたまに90年代の曲だけやるっていうライヴをやってるんですけど、そのせいで当時のレンチの感じが今作に入ってるもかもしれないですね。
ーーその頃の自分たちの音と今の自分たちの音は、何が同じで何が違うんですか。
SHIGE : あのね……自分に限っては、根本的なところはセカンドの『Black Holiday』(1996)ぐらいから変わってないんですよ。たぶんそれが伝わって「レンチっぽい」と感じたんじゃないかな。人間ですからね。こうやるとこうなるっていう案配がある。MUROCHINももう16年目だっけ?
MUROCHIN : そうね。そんぐらいになるね。
ーーああ、もうそんなにたちますか!
SHIGE : おっちゃん(前ドラマーの名越藤丸)がちょうど10年だっけ?だからMUROCHINの方が長いんですよね。この4人で、案配があるんですよ、
ーーこの4人が揃ったからこそ出る音が「レンチらしさ」。
SHIGE : そうそうそうそう。
坂元 : 絶対ある。
ーー意識しないでもそうなっちゃう。
坂元 : そう。そこはすごい安心できるところだから。そこに対する方法論は各アルバムによっていろいろあるけど、結果的にはWRENCHの曲の熱さというか、魂とか、ほっといても出るってことじゃないですかね。
ーーMUROCHINさんは途中からバンドに入ってきて、わりと客観的にバンドを見られる立場でもあると思います。
MUROCHIN : はい、そうですね。前の3人を見てると、いつもわりとミラクルな感じがあって。ほかのいろんなバンドもやってますけど、この3人の人間関係の対等な感じと、いつまでもいつまでも議論しているくどさと(笑)。そのくどさが、曲に深みと情熱を、より織り込んでいくような気がする。だから何回聴いても飽きない豊潤な深みを曲に感じる。それを生み出すコミュニケーションがあるし、それをいつでもやれるミラクルな3人だなと、後ろから見てて思います。
ーーソングライターが決まってて、その人の言うとおりに全部やるっていうバンドでは全くない。4人が対等の立場でモノを言うから、先の予測もできない。
SHIGE : そうそう。
ーーそして調整も大変だという。
松田 : 調整はほんと大変。うんざりする(笑)。
SHIGE : それが悪い意味で出た12年間だったかもしれないす(笑)。
坂元 : 調整に12年!(笑)。

RELEASE LIVE!!!

東高円寺二万電圧
2019.7.6(SAT)
WRENCH "weak" & GROUNDCOVER. "██████"
DOUBLE ALBUM RELEASE PARTY

-Act-
WRENCH
GROUNDCOVER.
difrakto (秋田)

open 18:30 / start 19:00
ADV 3,000yen+1DRINK / DOOR 3,500yen+1DRINK
e+ : https://eplus.jp/sf/detail/2936670001-P0030001
INFO : 二万電圧 03-6304-9970


新代田FEVER
2019.5.11(SAT)
ONE MAN!!!

open 18:00 / start 19:00
ADV 3,000yen+1DRINK / DOOR 3,500yen+1DRINK
[TICKET]
発売開始:2019/2/23(SAT)~
FEVER店頭
Lawson : L-code:70455
e+ : http://eplus.jp
INFO : FEVER 03-6304-7899


Other LIVE

3/23(SAT) All Night『グラインドカオス』
新宿LOFT
OPEN 23:30 / CLOSE 5:00
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft/110563

4/7(SUN) 『SYNCHRONICITY’19』
TSUTAYA O-EAST/TSUTAYA O-WEST/TSUTAYA O-Crest/TSUTAYA O-nest/duo MUSIC EXCHANGE/clubasia/VUENOS/Glad/LOFT9
openstart 13:00
https://synchronicity.tv/festival/

4/20(SAT) 『CONNECT歌舞伎町MUSIC FESTIVAL 2019 』
新宿BLAZE / 新宿LOFT / MARZ / RUIDO K4 / Zirco Tokyo
open 12:00 / start 13:00
http://www.connectkabukicho.tokyo/

6/23(SUN) 『SUPER JUNKY MONKEY 2days Super Mother Of Meatloaf 2019 』
下北沢 CLUB 251
open 17:30 / start 18:30
SMASH 03-3444-6751

7/26(FRI) 『FUJI ROCK FESTIVAL '19』オールナイトフジ
苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/artist/

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